北欧神話における世界の始まり

いまだに何も無き太古には
砂もなければ、海もなく
冷たき浪もなかりき
大地も無ければ 天も無く
奈落の口のあるばかり
いずこにも草は生えざりき

(古エッダ「巫女の予言」第三節)

この裂け目を”ギンヌンガ・ガップ”といいます。
(ギンヌンガ・ガップは『奈落』を意味するものだが、ただの空虚ではなく、
『物を生み出す力』を潜めた空洞というものもいる。)
”この世”はまだ存在しなないが、ギンヌンガ・ガップの北側には、
大地が作られる何代も前にできたという、
重い氷と霜で覆われたニフルヘイムの世界があった。
南にはそれよりも早く、一番最初にできたという、炎の燃えさかるムスペルヘイムが存在したそうです・・・
つまり、”この世”という概念はあくまでも”この”世なのであって、あの世はあったのかもしれない、
という実に狭義の意味での天地創造だと言っていいと思います
そして、この二つの国があってこそ”この世”は生まれることができるのです。

ちょうどニブルヘイムから寒冷とあらゆる恐ろしいものがやってくるように
ムスペルの近くにあるものは熱くて明るい。
そしてギンヌンガ・ガップの口は風の凪いだ空のように穏やかだった。
そして霜と熱風がぶつかると
それは解けて滴り
その滴が熱を送る者の力によって生命を変え、人の姿となった。
それはユミルと呼ばれたが、霜の巨人達はアウルゲルミルと呼んでいる。
彼から霜の巨人族は由来したのだ。

(エッダ『ギルヴィの惑わし』五)

ニフルヘイムの冷気とムスペルヘイムの熱風が互いにぶつかり合い、霜を融かし、霜が雫となって滴り、
「熱を送る者の力によって生命を得、人の姿となった」。これが巨人の祖ユミールです
融けた霜の中からアウドムラという巨大な牡牛が生まれた。 牡牛の乳房からは四つの乳の川が流れ出ていた。
ユミルは、その乳を飲んで生きていた乳を飲んで眠ると巨人は汗をかいた。
その時、左の腋の下から男と女が生まれ、一方の足がもう一歩の足とこすりあって頭の六つある巨人を生んだ。

そうして巨人は増えていったが、この一族は全て凶悪だった。
『ワフスルドニルの歌』では、毒気を含んだエリヴァガル川の毒を受けていたからだといっている。
巨人達は、霜の巨人の一族で、凶悪である一方、神々よりも人間よりも早く誕生している為、
世界の秘密に通じたとても賢い種族だとされている。
アウドムラが霜を舐めているとその中から人間が現れ、三日目には完全にその姿を表す。
彼はブリという美男子で、ブリはボルという息子を得ます。
ボルは巨人ボルソルンの娘ベストラを娶り、長男オーディン、次男ヴィリ、三男ヴェーの3人の子をもうけました。
しかしボルの3人の子は、霜の巨人族が嫌いで、ユミルを殺しました。
3人の兄弟は、死んだユミルの体をギンヌンガガップの中央に運び、そこでその体を使い世界を造りました。

肉⇒大地 血⇒海 頭がい骨⇒天空
骨⇒山 脳みそ⇒雲 眉毛⇒垣根
髪⇒木 小さい骨⇒岩 火花⇒太陽、星、月
(古エッダ「巫女の予言」第三節)

 頭がい骨の角は大地の果てにおいて、それぞれの角の下に4人の小人ドヴェルグを置きました。
ちなみに彼らの名は、東(アウストリ)、西(ウエストリ)、南(スードリ)、北(ノルドリ)と言います。(これによって、方角が生まれた。)

 ユミルから流れ出た血で、殆どの巨人族は溺れ死んだ。
しかし、ベルゲルミルとその妻の二人だけは、碾臼(ひきうす)に乗っていたため助かりました。
3人の兄弟は、辺境の浜辺ヨーツンヘイムに、生き残った2人の巨人を住まわせました。(ここが巨人の住む地になる)
また、大地の内陸部には、ユミルの眉毛で造った垣根で囲まれたミッドガルドと呼ぶ領域をつくりました。(ここが人間の住む地になる)

 ある日、3人の兄弟が海辺を歩いていると、根のついた2本の流木を拾った。
トネリコの木からはアスクという男ニレの木からはエムブラという女を作りました。

 オーディンが魂、ヴィリは知力と心、ヴェーは感覚を、アスクとエンブラに与えました。
そしてミッドガルドに彼らは、住むことになりました。(彼らが、人間の祖先になる。)
また、3人の兄弟はユミルの死体に集まった虫たちに、知力,心,姿などを与えました。(これが、小人族になる。)

 3人の兄弟は、ミッドガルドの上に、神々がすむ国アースガルドを造り、自分たちの住む地としました。
アースガルドとミッドガルドの架け橋としてビフレストという虹の橋がありました。

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